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仕事はスピードと精度 ビジネス技術英語ライティングの基本(4)

日本能率協会 JSTC技術英語専任講師 中山裕木子

 

前回より「メール」を扱っています。今回は【確認する】【説明する】を扱います。短い文を英訳し、練習しましょう。

 

【確認する】

何かを「確認する」ためにメールを送ることは多くあるでしょう。「確認する」という日本語が意図している状況は様々です。相手に対して①念を押しておきたい状況、②意図を聞きたい状況、③調べて欲しいという状況の3つをとりあげます。それぞれに使える動詞が異なります。

 

① 念を押しておきたい(使える動詞:confirm、make sure、be sure)

(1) 会議の日程が4月10日に変更になったことを念のため確認しておきます。
(2) 会議に資料をお持ちいただけますよう確認をお願いいたします。

(1) I am writing to confirm that our meeting has been rescheduled to April 10.
(2) Please make sure to bring the handouts to the meeting.
Please be sure to bring the handouts to the meeting.

 

≪解説≫
(1) confirm that___で「~であるということについて念を押しておく」という意味になります。動詞confirmには「正式に承認する」「裏付けをする」という意味があります。文頭では、定番のメールの書き出し表現であるI am writing to___.(「~するためにメールしています」)を使いました。メールの書き出しにはこのほかには、This is to confirm that ___.(「~するためにメールしています」)も可能です。
(2) 「Please + 動詞」で表す命令文を使います。Pleaseで動作を「促す」ことができます。動詞make sure, be sureは「確実に~する」を表します。

 

② 意図を聞きたい(使える動詞:clarify、mean)

(1) 今期の予算に関して、2点確認しておきたいことがあります。
(2) 確認なのですが、弊社の提案は受け入れてもらえないということですね。

(1) I would like to clarify two points about the budget of this term.
(2) Does this mean that you reject our proposal? /
You do not accept our proposal. Is our understanding correct?


≪解説≫
(1) 「明確化する」を表すclarifyを使います。I would like to clarify ____.で「~を明確化したい(確認したい)」となり、便利に使えます。
(2) 「~ということですね」と相手の意図を確認する際には、「意味する」を表す動詞meanが使えます。Do you mean___?(あなたの言っているのは~ということですか?)も可能ですが、客観性を増して尋ねたい場合にはthisを主語にして、Does this mean___?(これが意味することは~ですか?)とするとよいでしょう。また、「自分達の理解が正しいか」と尋ねる定番の表現Is our (my) understanding correct?も便利です。その場合、自分達が理解した状況を述べる一文をはじめに置き、その後に、別の文を続けて確認をします。

 

③ 調べて欲しい(使える動詞:check、confirm)

(1) この製品の在庫があるかどうかを確認してください。
(2) お送りした3月の日程のメールに関して、会議の日程を了承いただけたかどうかを確認いただき、折り返しご連絡ください。

(1) Please check whether this item is available. /
We would like to check whether you have this item in stock. /
Do you have this item in stock?
(2) Have you received my email regarding the March dates? Please confirm in your reply whether you can attend the meetings.


≪解説≫
(1) 相手の確認の行動を促すために「Please+動詞check(調べる)」を使うことができます。また、より丁寧な印象を与えたい場合には、Pleaseを使って相手に行動を促すのではなく、自分達を主語にして、We would like to check___.と確認したい旨を伝えます。また、Do you have ___?(~を持っていますか?)という万能な疑問文で「あるかどうか」を確認することもできます。
(2) 長い文は2つの文に分けて英語にするとよいでしょう。はじめの文で、「メール受け取った?」と疑問文で尋ねます。次にPlease___.を使って「会議に出られるかどうか確認して」と行動を促します。

 

【説明する】

メール本文内で、製品などについて説明して相手を説得する機会もあるでしょう。製品の問い合わせへの応答や、カタログの送付時に加える一文や、価格交渉時に加える一文など、「説明する」文を練習します。簡潔な英語で製品の特徴をメールで伝える練習のための5つの文を準備しました。陥りがちな長い文との対比で説明します。

(1) 既存の商品でNX10と同じ機能を持つものはありません。
(2) 弊社が開発した16nmのNAND技術により、業界最小の128GBフラッシュメモリの実現が可能になりました。

単語:16nmのNAND技術 = 16 nm NAND technology、業界最小の128GBフラッシュメモリ = the industry’s smallest 128 GB flash memory device


(3) プリンターPR-100は、高速・高性能、最小サイズを特徴とするオールインワンタイプです。ビジネスにもホームオフィスにも最適です。

単語:プリンターPR-100 = the PR-100 printer、オールインワン = all-in-one、最小サイズ = the smallest size in its class(同類の製品の中で最小)


(4) 本シリーズの低価格化が可能となったのは、生産拠点を中国へ移したためです。
(5) 弊社の積層構造によると、通常品と比較して、約90%スペースを省略できます。

単語:積層構造 = stacked architecture、通常品 = today’s products on the market

 

(1) No other products on the market have the same function as the NX10 series.
陥りがちな長い文× There are no other products on the market with the same function as the NX10 series.

 

≪解説≫ 否定の内容をNo…を使うことで肯定文で表します。There is/are構文を使わず、主語から文を開始します。

 

(2) Our 16 nm NAND technology enables the creation of the industry’s smallest 128 GB flash memory device.
陥りがちな長い文× Due to the 16 nm NAND technology we developed, we made it possible to create the industry’s smallest 128 GB flash memory.


≪解説≫ 日本語「~により」の部分を主語にしてSVOで組み立てます。一人称Ourで「我々が開発した」を短く表します。また、時制は現在形を使うことができます。

 

(3) The PR-100 printer is an all-in-one device featuring high speed, high performance, and the smallest size in its class. The printer meets the needs of both businesses and home offices.
陥りがちな長い文× The PR-100 printer is an all-in-one type printer that has characteristics of high speed, high performance, and the smallest size in its class. It is most suitable for businesses and home offices.


≪解説≫ 「~を特徴とするオールインワンタイプ」はan all-in-one device featuring…としました。「タイプ」は具体的な名詞(device)を使って表します。「特徴とする」は動詞feature(~を売りにする)が便利に使えます。また、SVCの文(be動詞を使った文)は使用可能ですが、連続しないよう、2文目は動詞meet(~を満たす)で具体的に表すことでSVOとしました。

 

(4) Moving the production facilities to China has enabled us to offer this series at lower prices.(動名詞が主語・SVO)/
We have moved the production facilities to China and can now offer the series at lower prices.(人が主語・SVO×2つの部分)/
We have moved the production facilities to China. This has enabled us to offer the series at lower prices.(1文目は人が主語、2文目はThisが主語)
陥りがちな長い文× The reason why it was made possible to lower the prices of this series is that we moved the production facilities to China.


≪解説≫ 主語は事象(動名詞)、人、Thisなど様々に選び、文を組み立てることが可能です。長い文を組み立てることが難しい場合には、2つの文に分けます。

 

(5) Our stacked architecture uses nearly 90% less space than today’s products on the market.
陥りがちな長い文× According to our stacked architecture, about 90% of the space can be reduced as compared with today’s products on the market.


≪解説≫ 日本語に対応させて英語を書こうとすると、文が複雑になります。単純に比較級を使って表現するとよいでしょう。平易な動詞useを選ぶことが大切です。

今回扱いました【確認する】【説明する】の表現のポイントをまとめます。次回は【メールのフォーマット】といくつかのメールの例やメールにまつわるこぼれ話をご紹介して、メールの解説を終えます。その先は、他の文書をとりあげてまいります。

 

確認する:文脈に合わせて表現を変える

  • ●「~であることを確認しておきます。」

    I am writing to confirm that _______.
    This is to confirm that ______________.
●「確実に~してください。」
    Please make (be) sure to ______________.
●「~を確認したい。」 I would like to clarify _______.
●「~ということですか。」 Does this mean that __________?
●「この理解であっていますか。」 Is our (my) understanding correct?
●「~かどうかを確認してください。」
    Please check whether _______________.
    We would like to check whether ______________.
●「~はありますか。」 Do you have ____________?
●「~を受け取ってもらえましたか。」 Have you received __________?
●「~かどうかを教えてもらえますか。」 Please confirm whether ______________.

 

説明する:3つのC(正確・明確・簡潔)のコツを使って明快に説明する
●否定の内容を肯定文で表す。
●There is/are構文を避けて主語から文を開始する。
●動詞enable(可能にする)を使った明快なSVOを使う。
●「タイプ」は具体的な名詞で表す。
●SVC(be動詞を使った文)は使用可能だが、連続しないようにする。
●主語は「人(We)」だけでなく、事象(動名詞)やThisが可能。様々な主語を工夫して使うことで、SVOを作ることが可能。
●長くなる場合には、2つの文に分ける。
●比較級を活用すれば短く表現できる。
●平易な動詞use(~を使う)を選ぶ。

 

出典:工業英語ジャーナル 2019年3月号